
プラープダー・ユンの履歴についてよくいただく質問のひとつが、「東南アジア文学賞って何?」というものです。そこで「鏡の中を数える」の訳者で、東京外国語大学の
宇戸清治教授からご提供いただいた資料などをもとにご紹介しておきたいと思います。
東南アジア文学賞は正式名称を「S.E.A.Write Award」といい、1979年に発足しました。サマセット・モームなど著名作家たちが愛したホテルとして知られる
ザ・オリエンタル・バンコクの当時のオーナーが、東南アジアの優秀な若手作家の育成に寄与したいという思いから発案、発足に尽力しました。名前の通り、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10カ国の作家や詩人などに授けられるもので、発足当時は加盟5カ国(タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシア)でしたが、1986年にブルネイが授与を開始し、1996年にベトナムでもスタート。以後、ラオス、ミャンマー(1998年)、カンボジア(1999年)が参加して現在に至ります。
この賞の特徴は加盟国全体で1名に授与するのではなく、同じ賞の名前のもと、各国ごとに1名ずつの受賞者を出す点です。選考方法や対象も各国ごとに異なり、詩や短編、小説、戯曲、民芸作品などへ与えられるだけでなく、ベトナムなどのように、特定の作品に対してというよりも、学術研究やその地域での功績、長年の文学活動の実績に対して与えられるケースもあります。
憲章より賞の目的を抜粋紹介すると下記の通り。
(1)加盟国の作家の創造的な能力を人々に知ってもらうため
(2)加盟国の文学、思想、芸術的財産を人々に知ってもらうため
(3)有能な作家の創作活動を支援、推奨、保証、広報するため
(4)加盟国の作家および人々の間の相互理解と友好を促進するため
タイを例にとって運営面を見てみると、選考対象となるのは、印刷物として出版された後3年を経過していない作品。応募作品が激増したため、2003年以降締め切りは3月31日に繰り上げ。毎年8月初旬までに最大7作品がノミネートされ、8月末の選考会議で受賞作が決定します。毎年フォーカスされるジャンルが決まっており、「短編集→長篇→詩集」の順で3年で一巡する仕組みです。こうした運用面はそれぞれの国ごとに違っています。
東南アジア文学賞の常任委員会の構成は以下の通り。
委員長、タイ言語・図書協会会長、タイ作家協会会長、オリエンタルホテル代表、タイ国際航空代表、基金支援団体代表、在タイのアセアン各国大使館代表。歴代委員長にはタイの王族や著名文化人(スパッタラディット・ディスクン殿下など)。1999年〜現在までの委員長は、スクムパン・ボーリパット殿下。
資金援助団体としては、イタルタイ(株)、ザ・オリエンタル・バンコク(受賞者は無料で1週間滞在)、タイ国際航空(往復旅費負担のほか加盟国へのホテル代込みフリー航空券)が初期の支援団体。1981年にはジム・トンプソン(株)が資金援助に加わった他、その後も世界各国の基金や内外の個人による基金が集まっているそうです。
10カ国全ての授賞式は、タイ王室の臨席のもとバンコクで行われます。受賞式では著名な作家によるスピーチも行われ、これまで、ジェフリー・アーチャー、ウィリアム・ゴールディング、ゴア・ヴィダルらもゲストとしてスピーチを行いました。
このように東南アジア文学賞は、特にタイにおいては日本の直木賞や芥川賞にも例えられる大変名誉ある賞なのです。プラープダー・ユンの「存在のあり得た可能性」は2002年に受賞しましたが、親の七光りがあっての受賞だなどと賛否両論が噴出。それを当てこするかのように、プラープダーは「バーラミー」(威光の意)という傑作短編(「鏡の中を数える」の冒頭に収録)を発表して世間を静まりかえらせたのでした。
■S.E.A.Write Awardのホームページは
こちら
■過去の受賞者の一覧もあるwiki(英文)は
こちら
東南アジア文学賞受賞者の作品のうち、和訳されてネットなどで購入可能なものとしては以下の通りです。
カムプーン・ブンタウィー(タイ,1979年受賞)
「東北タイの子」チャート・コープチッティ(タイ,1982年と1994年受賞)
「裁き」ニコム・ラーイヤワー(タイ,1988年受賞)
「ヨム河」プトゥ・ウィジャヤ(インドネシア,1980年受賞)
「電報」Y.B. マングンウイジャヤ(インドネシア,1983年受賞)
「香料諸島綺談」W.S.レンドラ(インドネシア,1996年受賞)
「ナガ族の闘いの物語」ウィン・リョウワーリン(タイ,1997年と1999年受賞)
「インモラル・アンリアル」プラープダー・ユン(タイ,2002年受賞)
「鏡の中を数える」ガームパン・ウェートチャチワ(ジェーン・ ベヤジバ)(タイ,2006年受賞)
「タイの少女カティ」
まだまだありますが、この記事は徐々に加筆させていただきます。
Posted by sublimeco at 00:51
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東南アジアの文学